憲法25条に沿った福祉の充実を!   小川みさ子

○日本の社会保障の現状

 わが国の社会保障は保険制度が中心で、雇用、医療、年金、介護に至るまで強制
加入です。この自己負担にプラス税金が投入されてきたシステムに影がさしはじめ、
多くの国民が安心して歳を重ねることさえできなくなっているうえに、今回の年金騒動
で、国民はさらに不信感を募らせています。経済のグローバル化という世界の潮流の
中で格差は拡大し、自ら命を絶つ国民が毎年3万人を超えています。

 あまりの低賃金で食うや食わずのまま、宿を求めてネットカフェや24時間営業の
店をさまよう若者たちや、働いても働いても生活保護水準でしか暮らせないワーキン
グプアと呼ばれている人たちが増え続け、生活保護所帯と合わせると日本の全世帯の
10分の1以上といわれています。さらに定率減税の廃止による増税も追い討ちをか
け、憲法25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を
有する 」はいよいよ空洞化しているといわざるを得ません。格差是正が声高に叫ば
れ、行政も多重債務問題解決の施策に、やっと重い腰を持ち上げたところですが、同
条第2項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の
向上及び増進に努めなければならない」と規定しています。社会福祉などの充実は国
がなすべき義務なのです。

○「野宿生活者支えあう会」の活動

 このような現実を背景に、私は鹿児島市で、たまたま今は持てる者が、持たざる
者、野宿生活を余儀なくされた人たちの自立を支援しようという、「野宿生活者支え
あう会」で活動しています。ホームレス生活者は今後ますます増えると予想されま
すし、またホームレス生活にならないようにするため、ネットカフェ難民とシニア・
ホームレス生活者の実態を把握しておく必要性を感じ、同会メンバーの依頼で、社会
福祉施設、生活保護施設、母子生活支援施設、婦人相談保護施設、DVシェルター
(注参照)、更生保護施設などで生活する人たちの調査をしました。
※ 注 DVはドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)、シュルターは保護施設

 毎週火、木、日のおにぎり配り、生協連合グリーンコープからの野菜、フェアトレード
によるネグロスバナナなど、果物の無償提供に支えられ、月1回、元ホームレス
生活者の自立支援のための料理会も開催しています。また残った野菜や果物を素材
にしたお菓子作りによるお米代稼ぎや衣類集めを続け、この6月には行政に次いで
独自のホームレス生活者の実態調査も行ない、秋にはNP0法人を立ち上げます。

 さらに、メンバーの司法書士、大学教師は、社会福祉士、精神保健福祉士などと共
に、貧困や障がいなどの理由により連帯保証人の引き受け手がなく、賃貸住宅に入
居できない人たちへの連帯保証人の提供と継続的な支援をしていく活動も進めつつ
あります。

○ある高齢ホームレス生活者のケース

 ここで、ある高齢のホームレス生活者への虐待暴行のケースを紹介します。今年
2月末、鹿児島市の繁華街である天文館で、ホームレスのお爺ちゃんが歩けなくなっ
て、荷物を抱えお尻で歩いているという連絡を受け、すぐ駆けつけたのですが、すで
に姿がありませんでした。それから数日たって同一人物らしき人が、公園近くの派出
所に保護されたと、ホームレス生活者からコレクトコールがありました。確認のため
交番に電話すると苦情があり中央公園に運んだとのこと。その数日後、同じ公園で若
者から殴る蹴るの暴行を受けているのを目撃した人から別の派出所に通報があり、
今度はパトカーで中央公園から泉公園へ移されたという連絡がありました。移された
先の泉公園に走ると、雨に濡れ背中を丸くしてパンをかじっている姿を発見。話しか
けても口を開かない状態が数日続き、メンバーで朝夕、人海戦術で見守りましたが、
「寒が戻ってきたので凍死してはいけない!」と、私が出席している鹿児島市議会の
本会議終了後に集合してレスキューを決めました。

 レスキューの日も雨が降っていて早朝、ザビエル教会の人とホームレス卒業の人
が、2週間以上トイレに行っていない衣類を廃棄し、シャワーで体をきれいに洗って
着替えなどを準備。私が駆けつけると、警官3人とメンバーが待っていました。動こ
うとしないおじいちゃんを、私が役所の人間ということにして病院行きを説得。やっ
と首をたてに振ってくれ、メンバーに抱えられ病院へ。その後、病院のソーシャル
ワーカーに相談し、受付を済ませ、市に電話をして生活保護の書類を整えてもらい、
血液検査-心電図-レントゲンと病院の中を一緒に右往左往し、担当医から入院
の許可が出たときは夜更けでした。
 いつも一人ぼっちのそのおじいちゃんは、5、6人が付き添っていることがうれし
かったのか、何度も涙を拭っていました。私が入院保証人になり、ベッドに横たわっ
たのを見届け、家族代わりとしてオムツ運びなどを引き受けることになりました。
こうなるまでに最初の通報から実に2週間近くも経過していました。この間、何度も
通報が行ったのに、警察は、暴行を受けていても、トイレへも行けず下着が濡れ
て汚れていても、歩けなくても、現場から別な公園に移して置いてくるだけ……。
まるで人間をモノ扱いしているような警察の姿勢には驚きました。77歳のこの方は、
幸い入院中に厚生年金があることが分かり、市が大阪の姪を見つけてくれ、大阪
の施設へと引き取られていきました。

○もう一人の高齢ホームレス生活者の例

 次の例は、昨年の9月に日本キリスト教団串木野教会からの電話から始った89歳
のホームレスのお爺ちゃんのレスキューです。JR+タクシーで教会の人に連れられ、
鹿児島市役所着。そのおじいちゃんは、戦時中、片目に武器の破片がささって視力
が落ち、歩きもおぼつかない様子で行き倒れ寸前でした。

 いったいどうしたらいいのかバタバタしながら、「野宿生活者支えあう会」の代表
に息を切らしながら報告。身分証明書などは一切なし。記憶も昔のことは詳しく覚
えていたりするのに、ごく最近のことは分からないという状態でした。関東大震災に
あったこと、海軍だったこと、商売に失敗し身内は妻も子も亡くなって天涯孤独で
あることなどだけが分かりましたが、放浪生活を始めてから20年も経ち、とにかく
もう野たれ死ぬしかない……と生きる気力が失せていました。
 市役所に事情を伝え、さてどうするべきかと悩み、交渉を重ねるうち、市役所側か
ら養護老人ホームを紹介されました。感染症がないという検査証明をもらうため、市
側が出した診察(検査)命令書を持って病院に走り、検査後、入院が許可されました。
 1年以上お風呂に入っていないということで、まずは看護助手に体を洗ってもらい、
着替えを準備し、市役所職員との連携で入院そして入園OK、となりました。
健康診断のための入院手続き、生活保護申請の手続き、養護老人ホーム入所手
続きがアッという間にすすみ、「20年ぶりにダンボールでなく布団で眠れる!天国
か、夢の中にいるようだ」と喜ばれました。
市の迅速かつ心ある対応に感謝!です。
 その後、その89歳のお爺ちゃんを老人ホームに訪ねてショックだったのは、デン
マークやスウェーデンと違い、殺風景な3人部屋に入れられていたことです。そりゃ
路上で毎晩、ねぐらを探すよりははるかにマシかもしれませんが、プライバシーの
保護どころではありません。
 NHKの番組「フリーター漂流」に登場した若者たちのタコ部屋もかなりショックで
したが、養護老人ホームも雑居とは知りませんでした。ここは、憲法25条に沿った
日本の福祉の見直しどころだと思い改善を求めています。また「行政・警察・病院な
どの連携を強化するシステムも構築していかなくては!」と、ますます、私たち支援
グループの活動の重要性を自覚しているところです。  (以上)
              


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(*^o^*)  ♪小川みさ子と仲間たち♪  無所属 草の根市民派
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by hinkon-kenkyu | 2007-07-16 10:27 | 投稿 小川みさ子  

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